かがやきコラム/廣川麻子3回目

/このかがやきコラムでは、各界で活躍している聴覚障害者が、自分の思い入れなどを手話で語ります。


テーマ/制作はだからやめられない

/こんにちは。
廣川 麻子です。
手話では、こうですよ。
/右手で親指を立てたグーを作り、その親指を右のほほにあて、上下にひねる表現/

//今回は、前回に続き、第3回目です。
私と演劇についてお話したいと思います。
第1回目と第2回目は、劇団との出逢い、劇団の内容についてでしたが、今回の第3回目では、私の仕事…俳優だけではなく、もうひとつの制作の仕事について、どういうものかお話したいと思います。
私が制作の仕事を始めたのは、7年ぐらい前です。
私は劇団に入って15年になるのですが、その半分ぐらいですね。
それなりに経験を積み重ねてきましたが自分ではまだまだだと思いますし、分からないことで戸惑うこともあります。
でも7年間、色々見てきましたし、学んだこともたくさんあります。

/制作という仕事は本当におもしろいですよ。
なぜかというと、ひとつめは、公演そのものの全体を見ることができます。
たとえば俳優の場合、舞台に立つので台本に書かれてあることを読んで、覚え、表現する範囲に限られてしまいますが、制作の場合、大きな範囲…公演が始まる時から、公演が始まるというのは、幕が開くという意味ではなく、そのずっと前、つまり、公演をやろうと決めた時から仕事が始まるのです。
ですから、公演の形や、どんな雰囲気で作りたいのか、お客さまにどう伝えたいのかを考えながら仕事をすることになるのです。
公演が終わり、幕が閉じるまで…いや違うのです。
その後も、お客さまが帰った後アンケートを読んで参考にしたりして、終わりになります。
そしてまた、次の公演が始まる、というような感じなのです。
このように仕事の期間が長いので、公演全体を見渡せるということなのです。

/次に、仕事について細かくお話したいと思います。
私たち劇団の場合は、大体1年ぐらい前から打ち合わせが始まります。
1年ぐらい前に公演をやろうと決め、演出家、名前を米内山というのですが、彼がどんなテーマで公演をやりたいか考え、提案されます。
それを制作部が色々話し合い、演出家も一緒に話し合い、決定します。
その次に劇場を確保します。
劇場を確保することは大事なことです。
きちんとした形の劇場を求めているのです。
普通の小学校の体育館、とかでなく、お客さまが見て心から楽しめるような場所といったら、やっぱり劇場がベストですね。
1年前に確保しておき、次に書くものがあります。
それは企画書です。
企画書というのは、タイトルや日時や、内容や出演者などを色々書くもので、そうやって企画書を作るのです。
そして、次に必要なのはやはりお金ですね。
私たちの劇団は本当に貧乏なのですよ。
ですので、国からの助成金、文化活動に対する助成金制度があるのですがそれに応募する書類を作ります。
それを申し込んでしばらくすると、結果通知が来ます。
採択されると安心して前に進めますね。
そして、スタッフを集めます。
スタッフはプロの方に頼むため、早めに予約しておかなければなりません。
それぞれ許可をもらい、集めてから出演者メンバー…誰が出られるか出られないかを一人ひとりに聞き、決めていきます。
また、チラシも作りますね。
チラシがないと、お客さまが来れませんね。
大事なチラシのデザインや、興味を持ってくれるような文章を考え、相談して作成したチラシを今度は印刷します。
依頼して印刷したチラシを配ってPR活動をします。
大変ですね。
でも、たとえば手話サークルに行ってお話して興味を持ってもらったり、前に観ていただいた公演の感想を聞かせてもらったりして、交流を深めるのがとても楽しいですね。
感謝しております。
そして、PRが終わったら、チケットの予約や申し込みを受け付けます。
電話やFAXやインターネットや口頭など、色々な申し込み方法があるのですが、それを受けて返事したり、予約のリストを作ったり、振り込まれたお金を確認したり、チケットを封筒に入れて送付したりします。
出演者は稽古を進めます。
その状況にあわせて必要なことはないか、サポートします。
たとえば、スタッフを呼ぶ必要があるとか、稽古をやる日、休む日などを相談してスケジュールを組んで管理するなど、全体を見渡します。
稽古の様子や、スタッフたちの様子や、お客さまとの連絡状況などすべて管理する仕事なのです。

/最後に、本番で劇場に入る時も、公演だけでなく、受付、楽屋などの準備、確認、世話をします。
劇場にお客さまがいらっしゃって、チケットを切ったりなどばたばたしてしまいますが、楽しいです。
公演の後、お客さまが帰られる時の表情が最初の時と違うのです。
面白かった、とか満足そうな表情をみていると、良かったと思い、ほっとする気持ちになります。
また、アンケートを読むと色々参考になって楽しいのですよ。
お客さまとの交流も楽しいのです。

/公演が終わった後、片付けをします。
ばらしというのですが、そのばらしが終わった後は皆でぱーっと打ち上げの飲み会をします。
今まで色々大変で苦しかったりしたけど、それがすべて吹き飛んでしまいます。
終わったのだなと思うのと同時にさびしい気持ちになります。
次はどんな公演の仕事ができるのかな、というのも楽しみのひとつです。
その為にも、仕事を頑張りたいと思います。

/皆さま、制作という仕事に興味を持っていただけたでしょうか。
ぜひ、一緒に仕事をしましょう。
/お待ちしております。
/ありがとうございました。


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