かがやきインタビュー(早瀬久美さん)


かがやきインタビュー(早瀬久美さん)
/ろう者で初めて薬剤師免許を取得した早瀬久美さんへのインタビュー(その6)です。

◆石川絵理
☆早瀬久美さん

早瀬久美さんへのインタビュー(その1)はこちらでご覧下さい。
早瀬久美さんへのインタビュー(その2)はこちらでご覧下さい。
早瀬久美さんへのインタビュー(その3)はこちらでご覧下さい。
早瀬久美さんへのインタビュー(その4)はこちらでご覧下さい。
早瀬久美さんへのインタビュー(その5)はこちらでご覧下さい。
◆ 聞いた話では、グレープフルーツジュースと薬を一緒に飲んではいけないと。
◆ あれはどういうことでしょうか。
☆ 薬にも様々な種類があってその中の一部がグレープフルーツジュースの成分と薬の成分とが喧嘩してしまう。
☆ その結果、薬の効果がなくなったり逆に効きすぎたりするなど問題が起こるんです。
☆ 食べ合わせと同じで、薬にも良い組み合わせ、悪い組み合わせというのがあるんですね。
☆ そういったことも含めて、私たち薬剤師も勉強が必要なんです。
◆ 本当に常に勉強なんですね。
☆ 資格を取って終わり、ではなくて仕事ももちろん必要だけどさらに勉強も必要。
☆ 薬の世界も常に変わるので、勉強が要ります。
◆ 本当に生涯、勉強ですね。
☆ ねえ、本当にこんなに勉強するとは思わなかったです。
◆ 小さい時「なんで勉強しなけりゃいけないの」と思うこともあると思うんですよ。
◆ 小さい時って大人になっても勉強をする習慣をつける大事な時期なんじゃないかと。
☆ そうですね。
◆ そういう意味では早瀬さんのようにコツコツ勉強する習慣がついているということは重要なんじゃないかと。
☆ 本当ですね。でも小さい時は何でも幅広く詰め込む。大人になると「本当に必要な情報は何?」と考えて選んでそれに専念できるようになると思います。
☆ 大人になってから色々詰め込むと頭がパンクしちゃうし。
◆ 自分にとって必要な情報は何かというのを判断して選択する力も大事になってきますね。
◆ 今まで色々お話を伺いましたが、これは「今まで」のお話でしたね。
◆ これからどうしたいと考えていらっしゃるのか、また、自分の次の世代、小中高生、大学生に伝えたいこと、などなどお聞かせください。
☆ 今、薬剤師としてはまだまだだと思っています。
☆ さきほどもお話があったように生涯、勉強というのも含めて私がこれから考えていることは今、薬学部が6年制に変わりました。
☆ 私の時は4年で卒業したんですが今はもう6年制に変わって、その分知識とか実技とか磨いている学生が出てきているんですね。
☆ その時に、私たちのような4年制で卒業した薬剤師は、6年制で卒業した学生に匹敵するぐらいの力を身につける必要があるんです。
☆ もちろん、仕事では私たちが先輩なんですが、中身的には私たちはもっともっと勉強する必要があります。
☆ 今「専門薬剤師」というのがあり、例えばガン専門薬剤師とかこれはガンの患者さんにどういう薬を出せば良いのか、量の調整などを医師と相談したり……ガン専門とか糖尿病専門とか色々な専門薬剤師が増えてきているんです。
☆ その中で、私が考えているのは「スポーツファーマシスト」
☆ スポーツ、ファーマシスト、これは薬剤師ですね。
☆ 要するにスポーツに関わる薬剤師。
☆ どんなものかというと、ドーピング。
☆ オリンピックやパラリンピックなどでスポーツ選手たちが抜き打ちの尿検査の結果、薬が検出されてメダル剥奪といった問題が起きていますよね。
☆ それはドーピング目的で飲む場合と本当に何も知らず風邪を引いたから風邪薬を飲んでしまったとか疲れていたから栄養ドリンクを飲んだ「しまった!」というケースの2つに大別されます。
☆ 狙ってドーピングをする選手はさておき、もう1つのケース、しまった、知らなかった、という選手に対して、私たち薬剤師が「この薬は検査にひっかかるからダメ」と助言、サポートに入る。
◆ 正しい知識を伝えるということ?
☆ 選手は知らないから、私たち薬剤師がきちんと伝える必要があるし、また現場では医師や看護師はもし怪我をしたら手当をしたり処置をしたりするけど、その時に使った薬に関して、医師や看護師は詳しくは知らない場合もあります。
☆ だから、薬剤師がもっとスポーツの現場に関わっていこうという目的で2009年度から新しくスポーツファーマシスト制度が始まったんです。
☆ その2009年度の募集が全国で500人。
☆ 少ないか、多いかはともかくとして実際に申し込んだ薬剤師は全部で4000人なんです。
◆ このくらいの比率ですね……。
☆ そのくらい関心を持っている薬剤師が多いということですね。
☆ 実は私、一期生に選ばれたんです。
☆ 本当は後輩の薬剤師で、デフリンピックの日本代表だった人も一緒に申し込んでいたのですが、落ちてしまいました。
☆ またもう一人の男性、フットサルをやっているんですが、その人も申し込んだけど落ちて……。
☆ 3人のうち残ったのが私だけ。
☆ なので、一期生というだけでなく聞こえない人も初めてという意味でプレッシャーはありますが、スポーツファーマシスト認定を取ったら、デフリンピックの選手の支援に入りたいし、ろう者の国体(全国障害者スポーツ大会)などでも支援できるようになれたらいいなと思っています。
☆ それは薬剤師だから出来ること。
☆ そういう面で、スポーツファーマシストの勉強もしているところです。
☆ もう1つは、高齢化が進んでいますね。
☆ 高齢者も増えて、医療現場でも病院や薬局から離れて在宅医療。
◆ 在宅医療の手話はこう?
☆ 在宅、医療。
☆ 病院から退院して家で医療受ける時に、通うのが難しいから医師、看護師、そして薬剤師も一緒に行って家でケアをする場合と地方で病院が遠く離れていて通えない人の場合は、こちらから行って診療をするとか色々あるんですが、その中で聴こえる方は聴こえる方にお任せして私は聴こえない方のための在宅医療に関わりたいと。
☆ そのためには、今の私ではまだまだ。
☆ 出来るようになるのは20年後くらいかなと私は予想しているんですが将来的には病院や薬局の中から出てそれぞれの家で個別に対応できる薬剤師になりたい。
☆ 今考えている目標はこの2点です。
◆ 新しい分野を開拓するイメージがありますね。
☆ 時代に合わせて……。
☆ 私が薬剤師になると決心した中学生の頃は母と一緒に、聴こえる聴こえないに関係なく色々な人が来る薬局を作りたいと思っていたのですが、今は時代に合わないんです。
☆ 新しく薬局を作るのは色々と大変。
☆ 今はつぶれる所も多いので、これから新しく作るよりは、色々な所で勉強して、それを生かす場を自分で探す方が私には合っていると思うんです。
☆ これから小中高生、大学生の皆さんにとって、夢というのは持つと良い。
☆ 今は無くてもかまわない。
☆ 今の自分を大事にして、自分を信じて周りの人にも感謝して、助けてもらって、お互いの人間関係を作っていってその上で将来、絶対自分のやりたい道、やりたい事が絶対見つかるはずなので、それに向けて頑張って欲しいしもしその時に何か壁にぶつかったら私たちという石川さんも含めて力強いサポーターが壁を壊していくし何でもいいから大人にも相談して欲しいし、逆に私たちもたくさん情報とかパワーを与えたいと思う。
☆ 聴こえない者同士だからできることってあると思うのでこれからも皆が自分のやりたいことを探しながら歩いていって欲しいなと思います。
◆ インタビューでお話を伺った上での今の言葉は重みがあります。
☆ ありがとうございます。
◆ 自分の夢が、今は壁にぶつかることが多いだろうと思っても、やる前から諦めないでとにかくやってみる。
◆ そうすれば周りがついてくるということ。これまでの様子や今のお話を伺うとそう思います。
◆ そういう経験があると「よし、私も頑張ろう!」と思えるし、勇気が湧いてくるようないいお話を長時間ありがとうございました。
☆ ありがとうございました。

インタビューは以上です。ご覧いただきありがとうございました。

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