かがやきインタビュー(早瀬久美さん)


かがやきインタビュー(早瀬久美さん)
/ろう者で初めて薬剤師免許を取得した早瀬久美さんへのインタビュー(その2)です。

◆石川絵理
☆早瀬久美さん

早瀬久美さんへのインタビュー(その1)はこちらでご覧下さい。
◆ 大学はどうやって決めたんですか?
☆ もちろん薬剤師と決めていたので、薬学部のある大学を探しました。
☆ その中で、その頃の法律ではまだ「聞こえない者には免許を与えない」という一文があったので、それを承知の上で受け入れてくれる大学を探しました。
☆ 高校の先生があちこちに問い合わせてくれて、でも、思った通りほとんどの大学からは断られました。
☆ でもその断られた理由として大きかったのは、「聞こえない」ということだったんです。
☆ 法律で聞こえない人は認めない云々よりも「聞こえないから」。
☆ 聞こえないから勉強が大変、皆について行けないとか、あとは「実験の時、聞こえないから危ない」そういう言い方でした。
☆ そういう言い方をする大学は、こちらからも「お断り!」ですね。
☆ 無理してそこに入っても、絶対にサポートはしてくれないだろうと。
☆ なので、そういう所は入らないと決めて、好意的に受け止めてくれる大学だけに絞ったんですが、結局1校だけでした。
◆ 1校しかなかったんですね。
◆ そうやって志望大学が決まったわけですね。次は「いざ受験勉強!」となるわけですが、受験勉強はどうやって進めましたか?
☆ 私にとって、大学はもうそこ1校しかないので、そこを目指して、まずは受験勉強。
☆ やはり普段の勉強をコツコツ積み重ねていくことがあとで効いてくると思います。
☆ また、受験勉強対策としては、今までやってきた勉強を信じて、自分の努力を信じて、さらに応用問題についても、問題集をたくさん購入する人が多いですが、私はそうではなくこれだけ、1冊、2冊だけに絞ってそれを完璧に解けるようになるまで繰り返しやるという方法でした。
◆ なるほど、それが結果的には大学合格に繋がったわけですね。
☆ もう、本当に泣きたいくらい。
☆ その大学には学科が3つあって最初に受けた学科には落ちて、次も落ちて、3つ目、これが最後!という時にようやく受かったので。
☆ 大泣きして万歳をしましたよ。
◆ 意地の悪い質問をするようだけどもしここで落ちていたら、次回にまた挑戦するか、もうあきらめるか悩むと思います。もし落ちていたらどうしていたと思いますか?
☆ そうですね、多分薬剤師の夢は捨てなかったと思うので、もう一度薬学部に挑戦していたと思います。
◆ 今のお話を伺うと、大学に入ることそのものが目的ではなく、その先のこの仕事に就きたいから勉強するという気持ちが伝わってきて、感心しました。そうでないとやっぱり勉強って続かないだろうと思います。
☆ ありがとうございます。
◆ これで晴れて大学生ですね。
◆ 大学生活はどんな感じでしたか?
☆ 初めの頃は本当に「花の女子大生」で、ふわふわしていたんですよ。
☆ でもそのうち「勉強が分からない!」という状況が起きたんですよ。
◆ 「勉強が分からない」というのは、内容が難しすぎたのか、情報が足りないのか、その辺りもお話いただけますか。
☆ 小学校から中学・高校は聴者の学校に通っていたので、その時は聞こえる友達とか先生方に分からない所を聞くという方法でやってきたんです。
☆ でも大学に入った後、同じ方法で、もし分からない時に友達に聞く。
☆ でもその友達も初めて受ける内容なのでさっぱり分からない。
☆ 先生も忙しすぎて捕まえられない。
☆ だからまったく分からないという状況になって、その時に、やっぱり今までの方法では無理。
☆ 大学に入って、授業の内容が分かる方法って何があるのかなと考えていた時に、聞こえない学生の団体で活動をしていたので、その時に「情報保障」という言葉を初めて知って、その方法なら大学にお願いすれば、リアルタイムで分かる、内容が掴める。
☆ それはすごくいい方法だと思って大学の先生方にお願いして、情報保障を付けてもらうという方法でなんとか解決しました。
◆ 私も大学で講義保障について活動した経験があって、早瀬さんと同世代なので同じような経験があるんですが、大学に講義保障をお願いすると断られることも多かった。
◆ 早瀬さんの所はスムーズでしたか?
☆ 最初から「聞こえない学生であるということを理解した上で入学を認めているので、もし何かあればサポートします」とはっきり言っていただいていたので、その言葉を信じて。
☆ 実際に「情報保障が必要です」と言った時にも「分かりました、すぐに用意します」と言っていただけてすごく有難かったです。
◆ それはすごいですね!
◆ 「私は聞こえないからこういう点で困っています」とはっきり言っていたというのと、大学側の理解とがうまく噛み合ってスムーズに進んだということですね。
☆ 大学に入った後、聞こえない学生の団体で活動していなかったらずっと苦しい4年間を過ごしていたのかと思うと、怖くなりますね。
◆そうですね。

次回に続きます。お楽しみに!


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