かがやきインタビュー(早瀬久美さん)


かがやきインタビュー(早瀬久美さん)
/ろう者で初めて薬剤師免許を取得した早瀬久美さんへのインタビュー(その3)です。

◆石川絵理
☆早瀬久美さん

早瀬久美さんへのインタビュー(その1)はこちらでご覧下さい。
早瀬久美さんへのインタビュー(その2)はこちらでご覧下さい。

◆ 授業の内容も理解できるようになり勉強も進んだわけですが、薬剤師になるためには国家試験を受ける必要がありますよね?
◆ 大学の受験勉強が終わったと思ったらまた受験勉強が……大きな試験があったわけですよね。
◆ その国家試験受験対策もお聞かせください。
☆ 大学を卒業した後に、国家試験に挑戦する時も、聞こえないということは前もって伝えておいた上で受験しました。
☆ やっぱり国家試験も大学受験と同じで、それまでの勉強の積み重ねが重要だと思いました。
☆ そういう面では、情報保障が付いたということは大きかったと思います。
◆ そうですよね。
☆ 情報保障を付けたことで、周りの聞こえる学生と同じ立場になって、そして次にそれぞれの勉強、努力の差が出てくるんじゃないかなと私は思います。
◆ 先ほどから法律について触れていますが、それは中学生、薬剤師を目指そうと思った時からご存知でしたか?
☆ そうですね。母と同じように薬剤師になりたいと思っていた時にまず母から法律の中に聞こえない人は薬剤師の免許が取れないと載っていることを聞かされました。
☆ それで、本屋さんに行って本を見てみると、本当に載っている。
☆ でも、母が言っていたのは「法律上で聞こえない人は認めないと載っているけど、実際の仕事では処方箋を見て調剤をする。だから聞こえないというのは関係なくできるはず」と。
☆ 確かにそうだな、と。
☆ そういう母の言葉のおかげで、中学生の頃からもう法律のことは知っていて、その上で自分に出来る所まではやっていこう、と決めたんです。
◆ 実際に現場を経験している人の言葉は大きいですね。
◆ そういう情報があったからこそ自分が出来る所まで頑張ろうと思ったというのもすごいと思います。
◆ いいお母様ですね!
☆ 母は本当に呑気な性格で「聞こえないからダメ!」と言われたことはなかったです。
☆ そういう面では、この親の下に生まれて良かったなと思います。
◆ 涙が出そうな良い話ですね。
◆ 今までお話いただいた「欠格条項」、手話ではどう表すのですか?
☆ 欠格、条項
◆ この表現はどういう意味ですか?
☆ 条項です。
☆ これが法律の文章です。
◆ ああ、法律の文章ですね。
☆ こう表します。
◆ 欠格条項がある、なるほど。
◆ 以前、受験の時はあった。でも今は薬剤師になれたわけですよね。
◆ どうやって乗り越えたのか、その辺りをお聞かせください。
☆ 大学を卒業した後、国家試験に挑戦して、それは合格したんです。
☆ その後ずっと欠格条項撤廃運動に取り組んできました。
☆ そのきっかけというのが、国家試験に受かった後、薬剤師の免許を取るためには、厚生労働省に対して薬剤師免許が欲しいと申請する必要があります。
☆ その時に、この人は見えないか、聞こえないか、身体障害者かどうかの診断書も一緒に出す必要があります。
☆ これは全員提出する必要があります。
☆ その時に、私としてはきちんと「自分は聞こえない」と明示した上で免許を取りたい。
☆ それは、もし隠れて免許を取ったとして、将来、仕事に就いた時周りから「聞こえないのに薬剤師?おかしいな、法律では……あれ?」と疑われることを考えると、今、思い切って法律を変えたほうが良いと思ったのと、母も「あなたのやりたいようにやったらいいよ」と言ってくれたので、薬剤師の免許を取得するのは後にして、まずは法律を変えるための運動をやろうと決めました。
☆ その時、周りが応援してくれて、さきほども話したように大学の時に一緒に活動した石川さんとか、皆さんが大学卒業後も様々な団体で活動していたので、それぞれの立場で助けてくれたのが大きいですね。
☆ 欠格条項撤廃運動では全国で署名が222万人分集まって、それを厚生労働省が「実際に聞こえない人が薬剤師になるんだ」ということを理解してくれて、やはり法律を変える必要がある、と厚生労働省も色々と動いて進めてくれたので、1〜2年くらいで早くも法律が変わったんですね。
☆ だから、本当に一人だったらなかなか難しかったと思いますが、学生の時また当時勤務していた会社などに助けていただいたのが本当に大きいと思います。
☆ ですので今は薬剤師の免許を取得し堂々と聞こえない薬剤師として働くことができます。
◆ 他にも聞こえない薬剤師、医師、看護師がいるということですが、その人たちの未来を作ったという意味でもこの運動を始めたのは非常に大きな力になったと思います。
☆ これは私自身のためだけではなく後々に続く聞こえない子供たちの道を広げることにもつながったと思います。 ☆ 石川さんを含めて皆さんが必要性を理解した上動いてきたから、とても大きな意義のある運動になったと思います。
◆ 今、聞こえない医療関係従事者は何人いますか?
☆ 法律が変わった後に免許を取得した方は全部で15人、15人もいないかな。
☆ 薬剤師だと10人くらい。
◆ 多いですね。
☆ 医師も2人いるし、看護師も2人いるので、本当に増えましたね。
☆ でも法律が変わる前に取得した軽度障害者もたくさんいらっしゃるので、そういう方々も含めれば全国でも50人くらいはいるかと。
◆ そんなにいらっしゃるんですね。
◆ 法律が変わった後に15人くらい増えたというのは大事なことだと思います。
◆ また、この運動をきっかけに周りの聞こえる人や健常者に対しても「聞こえなくても、もっと仕事が出来る」ということをアピールする良い機会になったと思います。

次回に続きます。お楽しみに!


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