かがやきインタビュー(早瀬久美さん)


かがやきインタビュー(早瀬久美さん)
/ろう者で初めて薬剤師免許を取得した早瀬久美さんへのインタビュー(その5)です。

◆石川絵理
☆早瀬久美さん

早瀬久美さんへのインタビュー(その1)はこちらでご覧下さい。
早瀬久美さんへのインタビュー(その2)はこちらでご覧下さい。
早瀬久美さんへのインタビュー(その3)はこちらでご覧下さい。
早瀬久美さんへのインタビュー(その4)はこちらでご覧下さい。
◆ 今は病院で働いているわけですが、職場での同僚、上司、医師、入院患者さんとのコミュニケーションも必要なのではと思うのですが、その辺りはどうされていますか。
☆ まずは職場の周りの方々とは、私が入る時に前もって、私は聞こえないからコミュニケーション方法は筆談が確実です。口話や声だと私が読み取り間違えたり言い間違えたりするのが心配ですし私にとって一番楽な方法が筆談。
☆ ですので、皆さんには筆談を徹底してもらうようお願いしました。
☆ だから入った時にはもう「カキポンくん」書いてはポンと押して消す機器をあちこちに用意しておいてくれたり、もし何かあった時にはすぐにメモに書いてもらうとか色々な方法で出来るだけ筆談で。
☆ 慣れている人には口の動きで分かるけれど、やはり私としては筆談じゃないと不安ですね。
☆ 上司も同僚たちも皆一緒に筆談して少しずつ手話にも興味を持ってもらって、皆さんが自由に手話の勉強ができるように手話の本を置かせてもらってご自由にどうぞという方法でのびのびやらせていただいています。
☆ 医師や入院患者とのコミュニケーションは私の場合直接的な接点は無いんです。
☆ でもたまたま聞こえない患者さんがいっぱいいらっしゃるので、その時に私が対応して手話で服薬指導をしたりとか、薬の相談をしたりとか、色々担当したりはしています。
◆ ろう同士というのも変だけど、手話で話せるということは、手話を使う人にとっては安心感が大きいのではないかと思います。
◆ でも手話は語彙がまだまだ足りないのではと思うのですがその辺りはいかがですか?
☆ 医療現場で使う言葉は聞こえる人でも難しいし、誤解もあります。
☆ だから誤解や難しさを解消するためには、聞こえない人も含めて分かりやすい言葉に言い換える必要があるんですね。
☆ 聞こえる人でも言い換えるということはあるけれど、聞こえない人の場合はさらに手話も作るんですね。
☆ 今、全日本ろうあ連盟としても医療手話の本を出していますがその目的も、やはり聞こえない人に医療現場の流れというのを理解してもらいたいためです。
☆ 手話ももちろん覚えてほしいしそういう目的で本を作りました。
☆ それにつなげて、薬の手話の本も私と後輩のろうの薬剤師とで一緒に手話の本を作って、これがまもなく出る予定ですけど、これは本当に薬だけに絞って作っています。
☆ その中で、薬剤師が何気なく使っている当たり前の言葉でも相手は間違える、それは聞こえる聞こえないに関係なく間違える。
☆ 例として「食間」という言葉は手話で表した場合は「食べる」「間」になりますね。
☆ もしこの手話を見た場合は「食べている間」
◆ 食べている間に薬を飲むだろうと。
☆ そう、間違えるんですね。
◆ えっ、間違いなの?
☆ 本当は「食べている間」ではなくて「食事と食事の間」
◆ ということは、朝、昼、夜の間、間ってこと。
☆ その表現を使って手話は「食べる」「間」ではなく「食間」。
◆ なるほど、こう表すんですね。
☆ そういうような手話を作って、普通に「食間」ってやると確かに通じるかもしれないけれど、意味を間違って取られる心配があるので、手話表現は普段は見られない珍しい表現をあえて使うようにしています。
☆ それは医療現場にとっても必要なことなのかなと思います。
☆ 通じる、通じないではなくて、珍しい手話でも表して、まずは表して、相手が初めて見る手話でもかまわない。
☆ 初めに表して、次に意味を説明する。
☆ 初めは「食間」、つまり「ご飯とご飯の間」または「ご飯が終わった後2時間以内」というような説明を付け加える。
☆ そうすると、聞こえない人の場合は言葉も覚えるし、手話も覚えるし意味も覚える。
◆ 3つの狙いがあるんですね。
☆ という良い面があるんですよ。
☆ 聞こえる人でも「食間」という言葉を聞いた時は誤解する。
☆ でも意味を説明されると「なるほど」と思う。
☆ というように言葉は非常に難しい。
☆ 簡単な言葉でも意味を間違って取られることもある。
☆ ということを、私たち薬剤師も考えなければならない問題だと思っています。
◆ 確かに「食間」と表されると、食べている間に薬を飲んで、また食べるというイメージがあります。
◆ でも朝・昼・夜の3食じゃなくて朝と夜だけの人もいますよね。
◆ その人の「食間」はどうなりますか?
☆ もしどれかご飯を抜いた場合でも、何か食べる物、軽いお菓子でもいいから何か食べ物を入れて、少しお腹を満たしてから1〜2時間くらいの間に飲む。
☆ きっちり細かくきちんと1時間2時間ということではなくて大体の目安。
☆ 薬は確実に飲むというのが基本。
☆ 薬を飲むためには空腹の場合とお腹を満たしたほうが良い場合と指示が違うことがあります。
☆ その場合はきちんと空腹の時に飲むまたはお腹を満たしてから飲む。
☆ 色々工夫が必要なんですね。

次回に続きます。お楽しみに!


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